子どもとの会話がかみ合わない?
「良いコミュニケーションを築けいていますか?」
このように聞かれて、自信を持って「はい」と答えられる方はどのくらいいるでしょう?そもそも、コミュニケーションとはいかなるものか、認識がそれぞれ違うかもしれません。お互いに言いたいことを言いあっている、つまり情報を伝達すること、できれば険悪にならない状態でそれを行うこと、と考える人は少なくないのではないでしょうか。
もともとcommunicationという単語は情報のやり取りや共有を表す言葉ですが、今や単にその意味を越え、互いに意思疎通を行い、共通の理解を得るための活動と考えられています。その結果、心が豊かになり、人生を価値あるものとして謳歌するというところを目指しているのです。
逆の視点で見ると、家庭で子どもやパートナーとの関係、職場で同僚・上司・顧客とのやり取りがうまくいっていないとしたら、それはコミュニケーションに問題がある可能性が高いです。
本当に真剣に、価値あるコミュニケーションを築きたいのであれば、まず自分のコミュニケーションを振り返るのが第一でしょう。
対人のコミュニケーションを考えるとき、前回お話した、自分と相手の”心の状態”をベースに見てみると、問題の一面が分かるかと思います。コミュニケーションの最も小さな単位の一つである、会話を例に見ていきましょう。
うまくいっている会話は以下のようです。母子の会話ですが、子どもの”自由な子ども”からお母さんの”養育的親”向かって話しはじめ、お母さんの”養育的親”から子どもの”自由な子ども”に返答があります。
「ただいま。おなかすいた」
「おかえりなさい。おやつ、あるわよ」
次はお母さんの”成人”から子どもの”成人”に向かって話しかけ、子どもの”成人”がお母さんの”成人”に返答するやり取りです。
「今日は何時頃に帰ってくるの?」
「たぶん、4時頃かな」
これらのように、会話を始めた側が期待している相手の心の状態から、始めた側の同じ心の状態に戻ってくるやり取りは、スムーズに行われ、会話が継続される可能性が高いです。
2つ目はいさかいに発展する危険を含む会話です。子どもの”自由な子ども”からお母さんの”養育的親”向かって話しはじめましたが、お母さんは”成人”から子どもの”順応した子ども”に返しています。
「ただいま。おなかすいた」
「遅かったのね。何があったの?」
下は子どもの”成人”からお母さんの”成人”に話しかけましたが、お母さんは”支配的親”から子どもの”従順な子ども”に返してます。
「ぼくの帽子はどこ?」
「自分のものは自分で管理しなさい」
会話を始めた側が期待していたのとは違う相手の心の状態から帰ってくる例です。期待を裏切られるので、言い争いに発展する可能性があります。
3つ目は”裏”のある会話の例です。お母さんの”成人”から子どもの”成人”に話しかけ、子どもは”成人”からお母さんの”成人”に返答していますが、心のなかではお互いの”子ども”の状態でやり取りしています。
「みーちゃん、もう寝る時間よ」(疲れた。早く一人になりたいよ)
「いつもよりまだ早いよ」(もっと遊んでよ)
2つ目や3つ目のような会話をよくしていませんか?
会話をスムーズに進めるためには、相手がどんな心の状態であり、自分のどの心の状態を期待しているのかに気づくことが大切です。自分の話しかけに対して、期待とは違う反応があったとき、相手の心の状態を考えてみましょう。そこに話しかけるようにすれば、会話がかみ合います。
子どもとの会話がうまくいかないという悩みの原因のほとんどは、このようなちぐはぐなやり取りになっていることが多いものです。落ち着いて、相手の心の状態をしっかりつかみ取る必要があります。