認識のずれが起きる原因
「もっと勉強しなさい!期末テストどうするの?」
「ちゃんとやってるよ。うるさいな」
いつもの言い合いです。お母さんと子どもの認識が違うからと言う人がいますが、親子に限らず、どうして認識の違いが生まれるかを考えたことはあるでしょうか?たとえば、同じ映画を一緒に見ても、見終わった感想がまるっきり違うということがあります。そういったことが、意志の疎通を妨げている要因になっていると考えられます。
人は自分の感覚器、つまり五感を通して周りの状況を認知します。しかし、人は実際に起こっていることのごく一部しかとらえていないのです。映画が上映されているとき、一瞬一瞬に莫大な画像情報と音声が含まれています。それらをすべて認識することは、普通の人間には不可能です。主人公を見ているときは、脇役や背景をあまりよく見ていないでしょう。あなたが意識的に見ている主人公の表情や、聞いているセリフ以外の情報を、いわば”フィルター”にかけているのです。そうすることで、一番ほしい情報を得ることができます。
問題はこの”フィルター”です。フィルターの数や形は人によって異なります。異なるフィルターを持っているから、見た映画の感想も違ってくるというわけです。
親子の言い合いの場面に戻れば、子どもの今の学力という現実に対して、お母さんと子どもは異なるフィルターを通して認知していると言えます。子どもの脳の中にある知識とそれを活用する神経系の機能と性能の現実そのものすべてを定量的に測定することはできません。何らかの二次的な情報を、さらにフィルターをかけて判断しているのです。
現実をありのまま捉えることはできず、フィルターを通して認知している。フィルターは人それぞれ異なる。まずは、この2つのことを前提に置きましょう。
しかし、他人のフィルターを自分と同じものにすることは不可能です。親子であってもです。コミュニケーションを有意義なものにするためには、相手のフィルターの存在に気づき、それを認めることが大事です。そうすることで、「この人はこう考える・感じるんだな」と受け入れることができるようになります。それがコミュニケーションの第一歩になるのです。