勉強したのにできない
「勉強したのにできない」
このように悩む生徒は少なくありません。努力をしたのに思ったようにできなければ、やる気も落ちます。やる気がなくなれば、当然、勉強しなくなります。どんどん悪いほうへと、マイナスのサイクルを繰り返すようになります。どこに問題があるのでしょうか?
結論から言うと、「勉強した」というのは自分なりの評価に過ぎず、自分の能力に見合った勉強をしていなかったのです。
勉強でも仕事でも、何に対しても同じことが言えますが、物事を覚える、できるようになるとき、はじめからできるわけではありません。何かを習得する、学習するには4段階のステップがあると言われています。その4つのステップをすべて踏むことで、「できる」という実感を得ることができるのです。
第1段階は「無意識的無能」と呼ばれます。つまり「知らないし、できない」という状態です。たとえば自転車の乗り方で言えば、乗り方も知らないし、何をどうしたらいいかも分かりません。
第2段階は「意識的無能」と呼ばれます。「知ってはいるけれど、できない」という状態です。自転車の乗り方について、誰かに教えてもらいます。しかし、何となく分かったけれども、前に進むことすらできないという状態です。
第3段階は「意識的有能」と呼ばれます。「知っていて、意識を集中するとできる」という状態です。教えてもらったとおりに、こうやって、ああやってと頭で考えながら、何とか前に進めるようになる状態です。ときどき、ブレーキの存在を忘れることがあります。
第4段階は「無意識的有能」と呼ばれます。「意識しなくてもできる」という状態です。ここではじめて、自分の思うように自転車を操れるようになります。この時点では、左右のペダルを交互に踏むとか、ハンドルをどのように操作するとかを、いちいち頭で考えることなく動かすことができています。ようやく、「できる」という状態になりました。
各段階にかかる時間には個人差があります。一瞬で次の段階に進む人もいるかもしれませんが、必ずこれらの4段階は経験しているのです。
上記の「勉強したのにできない」というのは、第2段階か第3段階にいるのですが、多くの場合、第2段階です。知っているのに問題が解けないとストレスが溜まります。しかし、イライラして勉強を止めてしまっては元の木阿弥です。さらに訓練(勉強)を重ねることで、第3段階に進めるのです。もう一度教科書や参考書を見ながら、自分自身で問題を解いてみる。これを繰り返すことで、さらに知識がつき、スキルが上がります。「できた」という喜びも出てきます。プラスのサイクルに入るのです。
第4段階に入ると、今まで解いたことがない問題に対しても、「こういうアプローチができるかも」という勘が働くようになります。
第2段階であきらめる生徒と、第3段階を乗り越えて第4段階に入る生徒とでは大きな差ができます。そして、その経験はその後の人生にも影響を与えることになります。