愛情と余計なお世話
おせっかいと言われる人がいます。何かと”気を利かせて”、相手を援助しようとします。ときには自分に負荷をかけてまで相手を助けようとがんばります。親切心や愛情からのつもりでしょうが、最初は相手も感謝の気持ちを抱いても、だんだんと迷惑と感じるようになり、その人を遠ざけるようになります。
近所や職場でもそのような人は見られます。「特売品だったから、奥さんの分も買って来たわよ」とか、「私がやってあげるわよ。さあ、貸して」などと、”余計なお世話”をしてしまいます。
家庭では子どものことを何でも先回りしてやってしまいます。「6時よ。起きてね」「着る服はそこにたたんであるわよ」「今日の時間割は国語、算数、理科…ね。全部カバンに入れておいたわ」「はい、ハンカチとティッシュ」「今日は帰りが遅くなるから、ママから塾に電話しておくわね」など。そして、「高校は○○高校に行こうね。大学は△△大学ね。塾を増やそうかしら」と進路も決めてしまいます。
上げ膳据え膳のサービスを小さい頃から受け続けた子が思春期を迎えます。「もう放っておいてくれ」「ママが決めた学校には行かない」と反発するようになり、無気力・無関心に陥っていきます。そこからDVが始まったり、引きこもり、不登校になることも少なくありません。
このときになって、「ママはどんなに自分を犠牲にして、あんたのことを育ててきたと思っているの?」と裏切られた気持ちになって嘆いてみても、改善に向かうことはありません。
これは”お役に立とうとしただけなのに”または”あなたのためなのに”と呼ばれているゲームです。
このゲームを演じる人は、自分は他人より優れているのだから、弱い人や困っている人を助けるのは当然だという強い信念を持っています。
また、自分は優秀であるがゆえに、自分よりできの悪い人の気持ちを汲み取ることができず、自分が描く愛情の枠組みに相手をはめ込もうとします。結果的に相手からは独善的で押しつけがましいと感じられてしまいます。
このように振舞うことで、実は自分自身がもっとも救われると潜在的に感じているのです。
このような人がカウンセラーを志望することも少なくありません。困っている人と何とか助けてあげたいという気持ちはすばらしく見えますが、実際は悩みを解決するどころか、逆に患者をより不安にさせ、状況をさらに悪化させることもあるのです。十分な訓練と経験を積んでいない、このようなカウンセラーには注意が必要です。