コミュニケーションに必要な刺激
「ママ、ただいま」
「おかえり。寒かったでしょ?」
「うん。おなか減った」
「おやつあるわよ」
いつもの親子の会話です。もし、お母さんが無反応だったらどうでしょう?
「ママ、ただいま」
「…」
「おなか減った」
「…」
子どもは「ママ、なんか変だな?」「ボク、何か悪いことしたかな?」などと不安になるでしょう。何げない普段の会話でも、良好なやり取りがあればお互いにいい気持ちになります。人は無意識に気持ちのいいやり取りを求めており、それが得られないときには欠乏感を抱きます。上記の子どもはお母さんに「ねぇママ、どうしたの?」と反応を引き出そうとするでしょう。
人や動物は外界からの刺激を受けることで、身体的にも、心理的にも発達することがわかっています。乳児が白い壁に囲まれた部屋で何の接触もなく、ただ一人置かれた状況を想像してみてください。刺激が何もないとどんな子どもになるでしょう。
交流分析ではこのような刺激を”ストローク”と呼びます。英語でstroke、手でなでるという意味です。赤ちゃんはなでてもらったり、抱っこしてもらったりする刺激を本能的に求めます。
ストロークには3種類の分類があります。言語的ストロークと非言語的ストローク、ポジティブなストロークとネガティブなストローク、そして条件付きのストロークと無条件のストロークです。
今回は言語的ストロークと非言語的ストロークを見ていきます。
冒頭の親子の会話のように、言葉をかけることによる刺激が言語的ストロークです。言葉をかけるとき、相手の顔を見て微笑むと、それは非言語的ストロークです。非言語的ストロークには他にも、会釈をしたり、握手をしたり、手を振ったり、頭をなでたりするようなものがあります。face-to-faceのコミュニケーションは通常、両方のストロークを含んでいます。
親密なコミュニケーションを築くには、言語的、非言語的の両方のストロークをお互いにやり取りすることが必要です。たとえ親子であっても、どちらか、あるいは両方のストロークを欠いてしまうと、良好な状態を維持するのは難しくなるので注意が必要です。