その信念はいつから?
「あの子は甘やかされて育ったから」
わがままで、自分の思い通りにいかないと、すねるかふてくされるか。そのような子どもを見たとき、こんな言い方をするのをよく耳にします。かわいがって、何でも子どもの言うことを聞いてあげているうちに、気がついたらわがままになっていたということです。「あの子は甘やかされて育った」という言葉は、その子を責めるよりも、育てた親を非難しているようです。
子どもが中学生くらいになると、「子どもは子ども。自分で考えるべき」とおっしゃる親御さんがいます。たしかに、これからの人生、自分でいろいろなことを判断していかないといけません。生きていくためには絶対に必要なことです。
では、判断するためには何が必要でしょうか。判断材料となる過去のさまざまな出来事や結果、他人の知恵や意見などが参考となりますが、判断の基になるのは自分自身の価値観や信念なのです。価値観や信念はどのようにしてできるかと言えば、多くの心理学が示しているように、生まれた直後からの、親との関係性の中で作り上げられていくのです。まだ言葉も分からないうちから、親からの言語、非言語のメッセージを受け、自分がどのように反応、行動すれば生きていけるかを、言わば本能的に決めているのです。「まだ子どもだから何も分からないだろう」といい加減な対応をしていると、それがその子の価値観や信念を決めることになるわけですから、大変なことになるかもしれません。
同じように育てたつもりでも、兄弟姉妹によってそれぞれ性格が違いますよね?一番上の子は言うことを聞く良い子、二番目は要領が良い、三番目は甘え上手、などと聞くことがあります。上下に兄弟姉妹がいる、いないという状況の違いはありますが、それを踏まえた上での親からのメッセージを受けてきたのです。たとえば、「お兄ちゃんなんだから…」、「おねえちゃんの言うことを聞きなさい」などは何気なく言ってしまう言葉ですね。また、「うるさくしないの」、「行儀よくしなさい」というしつけの言葉も、一見聞いていないように見えても、受け取った子どもは深く心に刻みます。
大人が持っている、「○○してはいけない」や「○○すべき」といった考え方は価値観や信念から出てくる言葉で、その源は親から受け取っていたメッセージなのです。法律や倫理に反するような行動を禁止するメッセージもたくさんありますが、「本当にこれは私の人生にとって必要なの?」と思ってしまう考え方もあるのではないでしょうか?
人はそれらの価値観や信念を基に、人生をどう生きていくかという”人生の台本”を幼児期に作っているそうです。もし、あなたあるいはあなたのお子さんが、「ちょっと違うな」と感じる考え方をしていると思ったときは、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。頭ごなしに否定しても、振り払えるものではありません。時間をかけて解きほどいていかないといけません。