視線が伝えていること
前回は、相手の動きの小さな変化を見つけることで、その人の心の動きを推察することができるというお話をしました。人は心の状態によって、顔の表情や体の動き、息づかい、肌にも変化が現れるものです。そして目の動きもまた、さまざまな心や思考の変化を見せてくれるのです。
たとえば、誰かにこんな質問をしてみてください。
「小さいころ大好きだったセーターの色は何色だった?」
相手は少しの間、そのころの記憶を探します。そのとき、その視線は左上(あなたにとって右上)に向いているでしょう。
あるいはこんな質問はどうですか?
「小学校の校歌はどんな感じでしたか?」
その歌が頭の中に蘇るとき、相手の視線は左横を向いていませんか。
今度は少し違った質問をしてみます。
「20年後、あなたはどんな街に住んでいるでしょう?」
20年後なんて想像もつかないかもしれません。それでも少しずつイメージが見えてくるはずです。そのとき視線は右上のほうに向けられているかもしれません。
このように、記憶に残っているイメージや音を思い出したり、経験のないイメージや音を想像するときに、人は無意識に視線を変えるのです。
「あぁ、困ったなぁ。どうしよう。」
こんなふうに悩みながら自問自答しているときは、左下を見ています。
「胸に何かつかえているみたい。」
重い心を打ち明けるとき、自然と右下を向いていると思います。
左利きの人では向きが逆になることが多いと言われています。ただ、この目の動きは必ずそのように現れるものではありません。しかしバラバラに動いているのではなく、ある傾向を持っています。まずはその人の特徴をつかむ必要があるのです。
より良いコミュニケーションを取るために、相手の変化に気づくことが重要です。目の動きは気がつきやすい変化ですが、それがどのような心の動きから起きているかが分かると、そのときの相手に対してぴったりの言葉をかけてあげられるでしょう。