子どもは感性で両親のメッセージを受け取る

人生脚本はたった一つの決断から作られるわけではなく、いろいろな決断が組み合わさって作られます。一つひとつの決断は、多くの場合、両親からのなんらかの”メッセージ”に対する反応によってなされます。
そのメッセージには両親が意図的伝えたもの、意図せずに伝わってしまったものの両方があります。まだ言葉を知らない赤ちゃんは両親が話しかけた言葉の意味がわかりません。つまり、すべてのメッセージは非言語で伝わります。
たとえば、「かわいいわね。大好きよ」と両親が話しかけてきても、その意味が分からないので、両親の表情や声、触感からの印象がたよりです。言葉では「大好きよ」と言っていても、赤ちゃんの知覚しだいでは真逆のメッセージとして受け取ってしまう可能性があるのです。
両親からの接触以外にも、突然の大きな音や振動、激しい光などから、命を脅かす恐怖を感じるかもしれません。。赤ちゃんにとって両親はすべてなので、現実の出来事はすべて両親が関係していると思っています。したがって、両親にはどうしようのないことも、両親の”仕業”と決め込んでしまうのです。
言葉を覚えたあとも非言語のメッセージを受け取り続けます。
たとえば、宿題を学校に持っていくのを忘れたとします。前の晩にちゃんと用意をしていたはずなのに、宿題だけランドセルに入れてませんでした。がんばってやったので、特別なものとして扱ったからかもしれません。
宿題を持っていくのを忘れたと聞いたお母さんは、「あんたはいつもそうでしょ。しっかりして!」と怖い顔をして大きな声で叱ったとします。子どもは「ぼくはこの家の子でいてはいけないんだ。死んだほうがいい」と思うかもしれません。
あるいは、お母さんはキッチンで晩ごはんのしたくをしながらその報告を聞き、一瞬振り返ったあとに「あんたはいつもそうでしょ。しっかりして」と言ったとします。子どもは「ぼくはそんなに大事じゃないんだ」と決め込むかもしれません。
あるいは、「あんたはいつもそうでしょ。しっかりして」と苦笑いをしたとします。それを見た子どもはつられて笑い、「バカな失敗をすればよろこんでくれる。そのように振舞おう」と無意識に思い込むかもしれません。
また、「あんたはいつもそうでしょ。しっかりして」と言ったあとに忘れた理由を聞いて、どうしたらよかったかを考える余裕を与えたとします。子どもは「ぼくが自分で考えていいんだ」と感じるかもしれません。
大人の感性とはまったく違う方法で赤ちゃんや子どもは感じることが多いので、どんなに思慮深く接しても、意図した通りには100%伝わらないと思っておいたほうがいいでしょう。