ここまでお話ししてきた人格適応論は心理療法の知識です。長い年月をかけた臨床的な研究によってまとめられ、数多くの実践的成果をあげてきました。しかし、いくつかの未解決の領域もあり、現在もまだ世界中で研究が続けられています。

心理療法というと、精神的な病にかかった場合にのみ関係すると思われるかもしれません。しかし、心理療法は患者とセラピストだけのものではなく、普通に生活している人たちにとっても効果的な知識なのです。
人間関係、とりわけコミュニケーションのトラブルは、私たちの仕事、学業、家庭生活において大きな悩みを抱えることになります。
他人のみならず、たとえ親子であっても相手は自分ではありません。別の人間です。子どものことはすべて（あるいは、だいたい）わかっていると考えるのは、単なる思い込みにすぎません。親子間のちょっとした言い争いであっても、相手のことがよくわからないことに起因していることがほとんどです。

そういったコミュニケーション上のトラブルを防いだり、改善したりするために、心理療法の知識の一部を利用することは、すてきな人間関係を保つためにとても有意義なことではないでしょうか。

自分だけの感覚に頼らず、価値ある知識と出会い、それらを身につけていきながら、お互いに人生を楽しんでいけたらと思っています。