無意識に伝えるメッセージはパワフル

禁止令のいくつかをもう少し見ていきましょう。
◆お前であるな(Don’t be you)
女の子が欲しかったのに男の子だったり。ついに3人とも女の子だったり。欲しがっていた性とは反対の子が生まれたときに、送りがちな非言語的メッセージです。直接子どもに話すこともあります。「お前が男の子だったらなぁ」
それだけにとどまらず、男の子に女の子っぽい服を着せたり、女の子にボーイッシュな格好をさせたりすることもあります。そういった幼児は親の希望を心の底にしまい込み、親の期待に応えるように振舞います。
あるいは、他の子どもと比べる親もいます。「隣のたかしくんはもう、ひらがなもカタカナも全部書けるんだってよ。あなたはひらがなもろくに書けないのにね」
親には理想の子ども像があって、わが子がそれに適応している部分は受け入れるけれど、適応していない部分に対しては否定的な反応を示すことがあります。子どもは何とか応えようとしますが、実現できないときは”自分はOKではない”と決め込むのです。
◆子どもであるな(Don’t be a child)
子どもぎらいの親という人がいます。言い訳のように「自分の子どもは好きよ」と話すことがありますが、潜在的には自分の子どもであってもきらいです。こういう人は、「子ども」の自我状態の中で自分こそが大切に扱われるべき子どもであって、他の子どものがいると自分がないがしろにされるにちがいないといった恐怖を感じています。したがって、周りにいる子どもは”大人のふり”をする必要があります。「お兄ちゃんなんだからがまんしなさい」「大きい子は泣いたりしないの」などの言語的メッセージをよく与えます。
また、子ども自身が自分に対してこの禁止令を与えることもあります。第一子は弟や妹に対して兄・姉の責任を取ろうとし、一人っ子は大人の中で過ごすことが多く、自分も大人と同等の責任を持とうとします。しっかりしないといけないのです。
もしあなたが、にぎやかなパーティーなどで楽しめずに居心地が悪いと感じたり、子どもに接する際にぎこちなさを感じる場合は、この禁止令を持っている可能性があります。
◆成長するな(Don’t grow up)
末っ子に甘い親は多いものです。上の子たちはどんどん大きくなっていくなか、この子だけは側にいてほしいと「子ども」の自我状態で望んでいます。
そのような親は、自分は良い父親、良い母親と自認している可能性があります。子どもが大人になって自立してしまうと、自分たちにはもう価値がなくなるという不安を感じています。
あるいは、まだ大人になりきれていない親(年々増え続けているようです)は、「いつまでも私のお友だちでいてね」という非言語的メッセージを与えるでしょう。
前回もお話したように、こういった禁止令を持っていたとしても、無意識の底に沈んでしまっているので、自分では気がつかないことが多いものです。しかし、無意識から発せられるメッセージにはパワーがあり、周りの人や自分自身にも大きな影響を与えます。気づかないことに、大きなリスクがあるということです。