態度や表情で伝わる「○○するな」

禁止令とは、幼児期に親から繰り返し与えられるネガティブな言語的あるいは非言語的メッセージのうちで、特に有害なものをいいます。それらは以下の12種類あるといわれてます。
「存在するな」「お前であるな」「子どもであるな」「成長するな」「成功するな」「何もするな」「重要であるな」「属するな」「近づくな」「健康であるな」「考えるな」「感じるな」
こんなことを自分の子どもにいうわけがない、と思うかもしれません。これらの禁止令のほとんどは言葉ではなく、非言語的メッセージとして与えられます。つまり、親自身はそのつもりはなくても、言葉を知らない赤ちゃんは両親の態度や表情から禁止令として受け取ります。
忙しさから、愛する赤ちゃんにつれない態度をすることはあると思います。安心してください。一度や二度では、赤ちゃんは真に受け取りはしません。繰り返し繰り返し行われる場合や、大きなインパクトを伴う場合にその可能性があります。
禁止令のいくつかを見ていきましょう。今回は「存在するな」です。
◆存在するな(Don’t exist)
もっとも強烈な禁止令の一つといえます。
もしこれまでに、家出や自殺を考えたことがあるとしたら、あなたはこの禁止令を持っているかもしれません。あるいは、自分には価値がない、役に立たない、愛される資格がないなどと思ったことがあるとしたら、それも同様です。
どのようにして親は子どもに「存在するな」の禁止令を与えるのでしょうか。
禁止令は親の「子ども」の自我状態から発せられます。たとえば、生まれた赤ちゃんが家に来て、ママは赤ちゃんに付きっきりになります。若いパパは、赤ちゃんが来る前に自分に寄せられていた関心のすべてが赤ちゃんに注がれるのを目の当たりします。そのとき、自分が2~3歳の幼児のころ弟か妹ができ、はじめて家に来たことを思い出して、そのときの気持ちを再現するでしょう。孤独に追いやられる恐怖から、こんな弟や妹なんかいらない!と思ったかもしれません。今、若いパパは無意識のうちに、そのときの態度を再演しているのです。
また、すでに数人のお子さんがいるお母さんに、”思いがけぬ授かりもの”があったとします。育児と家事に追われてクタクタの毎日。「もうたくさん!私はこれ以上は無理!」と叫びたくなるかもしれません。このとき、お母さんは「子ども」の自我状態にいます。周りからは赤ちゃんの世話をよくしているように見えても、ちょっとした態度や表情に”拒絶”が現れてしまいます。赤ちゃんはそれを見逃しません。
禁止令は幼児が自分自身に与えることもあります。
あのいまいましい弟か妹なんか死んでしまえばいいと考えたことがあったとしたら、「私はなんてひどい人間なのだろう。人殺しと同じだわ。私のほうが死んだほうがましよ」と決めつけるかもしれません。
あるいは、お母さんからよく聞く話に、「あんたを生むときは大変だったんだから。死ぬかと思ったのよ」があります。すると「ボクが生まれるとき、お母さんを殺すところだったんだ。ボクは危険な人間で、ボクのほうが殺されるべきなんだ」と決断します。
そのように決断する子どもは多いはずなのに、みんながみんな自殺をしないのは、「○○をしているかぎり、ボクは生きていていいんだ」とあとで決断するからです。これを複合決断と呼びます。たとえば、「甘えられている間は生きていてもいい」という具合です。