自力解決を避ける、4つの行動

前回に続いて、値引きの話を。
値引きは頭の中でやっているので、目の前の人はあなたがいま値引きをしているかどうかは分かりません。しかし、値引きに伴う行動や発言はあります。私たちはそれらに気づくしかありません。
値引きをしているとき、典型的な4つの行動があります。これらはすべて受動的な行動です。
・なにもしないこと
・過剰適応
・イライラ
・無能または暴力
◆なにもしないこと
教室やセミナーなどの会場でときどき見かけます。先生や講師が生徒を指名して質問をします。あるいは1つの質問に生徒が順番に答えていきます。ある生徒は指名されたとき、または順番が回ってきてもなにも答えません。机上の一点を見つめながら、ただ沈黙してます。
この生徒は、質問の答えを考えるかわりに、なんの言動もしないことにエネルギーを使っています。この状況に反応するという自分の能力を値引きしているのです。
◆過剰適応
仕事から帰ってくると、脱いだ服やかばんがそこらじゅうに散乱していて、おやつに食べたと思われるカップラーメンの食べ残しはテーブルの上。ペットボトルも出しっぱなし。テレビはついているけれど、見ている人はいない。お母さんはなにも言わずにテレビを消し、汚れた服を洗濯機に入れ洗濯を始め、ラーメンの食べ残しを捨て、夕飯のしたくを始めます。お母さんはもはや、子どもたちに片付けなさいと言おうと考えもしなかったのです。そうすることが当たり前のように行動します。
このような人は職場や学校で重宝されるかもしれません。しかし、誰かがそれを望んでいるかどうかを考えてみることもなく、あるいは自分自身そうしたいのかどうかも考えようとはしません。
この人は自分自身の考えに基づいて行動する能力を値引きしていて、ただ誰かが望んでいるかもしれないと信じていることをやり続けるのです。
◆イライラ
すいている時間を見はからってお店に買い物に行ったら、店員さんたちが奥でおしゃべりをしています。商品について聞きたいことがあるけれど、おしゃべりに夢中で自分に気づいてくれません。店員さんたちのほうをチラチラ見ながらつま先は床をトントン、人差し指も持っている商品をトントンたたき始めます。
この受動的行動はイライラです。この状況を解決するための能力を値引きしています。「成人」の自我状態(心の状態)が優位に働いていれば、店員さんに聞こえるように声をかけることもできたかもしれません。
◆無能または暴力
学校や塾に行きたくないと思うとき、お腹や頭が痛くなる生徒がいます。これは実に多いです。薬を飲んでも症状はあまり改善しません。外的な要因ではないのですから。学校や塾で普通どおり勉強したり、これこれこういう理由で休みたいと伝えたりする能力を値引きしています。具合が悪くてなにもできないから、誰かに問題解決をお願いしたいのです。
職場でトラブルがあった日の帰り、クルマの運転が荒くなったり、飲みに行って大暴れしたり、家に帰ってきて足元にあるものを蹴るなど、ちょっと乱暴なことをするお父さん。そうしたからといって、もともとの問題が解決するわけではありません。元の問題に向き合わず、他のことでうっぷんを晴らそうとするので、受動的行動といえます。
上記のイライラのあとにこの行動が現れることも多いです。
誰かがこのような行動をしているとすぐに気づくのですが、自分自身がその真っただ中にいるときは意外と気づかないものです。