問題に直面したときの判断はどっち?

人生脚本とは、何もわからない幼児期に、自分の生命を脅かすような恐ろしい世の中を生き抜いていくために決めた戦略のことで、人生の計画でもあります。幼児期の決断ですから、大人からすると誤解もたくさんあって、適切でないものもありますが、成長する過程でどんどん強化され、不動のシナリオとなっていきます。
現実の世界において、「成人」の自我状態で判断すればすっきり解決できるようなことでも、脚本に入り込んで(脚本に従っている)いては、どうもうまくいかず、嫌な気持ちや具合の悪い状況に陥ってしまうことが少なくありません。
脚本に入り込むきっかけの一つに、前回までお話してきたドライバーがあります。親から授かった”しつけ”の一環であるメッセージです。ドライバーによる行動が脚本に引き込みます。
ここで、脚本に引き込むもう一つの行動についてお話します。それは「値引き」(Discounting)です。価格を下げるという意味でよく使われます。
交流分析での値引きは価格ではなく、問題解決のための情報、思考や行動、能力などをないものとして無視することです。
私の教室の中でも値引きがよく発生しています。
「先生、わからない」
こんなふうに言ってくる生徒は、ほとんどの場合、自分の能力を値引きしています。直前に習った内容を理解していないか、そもそもちゃんと読んだり聞いていません。少し戻って説明を読めばできるようになるのに、それをしようとしないのです。めんどうくさい、それ自体が値引きです。この子の人生脚本はいかなるものでしょう?
問題に直面したとき、冷静な判断をもって解決を図ろうとするか、それとも値引きをして脚本に進むのか。日常生活において、頻繁にその選択に直面します。
次回から、値引きについてもう少しお話しようと思います。