やる気の”スイッチ”を作る
以前に何かをとてもうまくやり遂げたときの感情、たとえば達成感や充実感、有能感を再生すれば、いま目の前にある困難にも立ち向かう意欲が高まるというお話を前回までにしてきました。それと同様に、過去の怒りや悲しみ、辛さなどの感情を再生すると、ネガティブな気持ちに支配されてしまいます。
たとえ意欲が落ちている状態にいても、ここぞというときにそこから回復して、意欲的になることができればとてもありがたいと思いませんか?
過去のポジティブな経験をすぐに思い出すことができればいいのですが、簡単ではありません。ところが、自らの身体を使って、その”スイッチ”のようなものを作り出すことができるのです。
まず、”スイッチ”となる刺激を決めます。視覚や聴覚、体感覚のいずれかの刺激を選択します。視覚としては絵、写真、動画、単に色でも構いません。聴覚は音楽や音声など。体感覚は味やにおい、肌感覚などです。どこか出先や人前でもできるようにするには、写真や音楽、味やにおいといったものはあまり適当ではありません。肌感覚には、指や腕、肩、首といった身体の一部を触ることで得られる感覚がありますが、あまり大げさなものでなければ、人前でも可能です。たとえば、親指と薬指で輪を作ったり、腕のある部分をつかんだり、つねったりする方法があります。
ただし、不要なときに”スイッチ”を押してしまわないように、頻繁に行うしぐさは避けたほうがいいでしょう。
スイッチにする動作が決まったら、なりたい状態と同じ体験を思い出します。集中力を得たいのなら、以前にすごく集中したときのことを思い出します。できるだけ詳細に思い出してください。思い出すにつれて気持ちが高まっていきます。もう少しで気持ちがピークに達しそうなときを見はからって、スイッチと決めた動作をします。そして一旦、気持ちを休めます。これを何回か繰り返します。
スイッチの動作をしたときに、なりたい状態を得られればOKです。まだ弱いと思ったら、もう少し繰り返します。
これは認知バイアスの一種で、心理現象を利用した手法です。集中して勉強や仕事に取り組みたいとき、このスイッチを使えば、すぐにパワフルな状態を作り、がんばることができるはずです。