”しつけ”のメッセージがネガティブになることも

前回お話した両親の各自我状態から乳幼児の各自我状態に送られるメッセージは、「脚本のマトリックス」と呼ばれるモデルで表されます。それらのメッセージは、拮抗禁止令、プログラム、禁止令・許可の3つに分類され、人生脚本のベースとなります。すなわち、一生抱え込むメッセージになるわけです。
そのうち、拮抗禁止令についてもう少し見ていきましょう。
拮抗禁止令は両親の「親」の自我状態から発せられるメッセージです。それらの多くは”しつけ”の一部として子どもに向けられます。しつけとして適切かどうかはここでは問題にしませんが、少なくとも親の意識ではそう考えているでしょう。
何をすべきか、何をすべきではないかについて、両親は子ども何千というメッセージを与えます。「しっかりやりなさい」「さっさとしなさい」「いい子でいなさい」などのメッセージは、多くの場合、社会の中で快適に暮らすために役だっているはずです。大人になってからも、だらしなく、グズグズして他人に迷惑をかけないようにと考えるでしょう。
しかし、それらの中にはネガティブに作用するものもあります。「しっかりやりなさい」という親からのメッセージを自身の「親」の自我状態の中に保存している人は、高校や大学ではそれらのおかげで成功するかもしれませんが、就職してからもメッセージが頭の中でときおりささやくことで、働きすぎから過労、ストレス過多、さらには精神的、身体的な病気を引き起こすかもしれません。
拮抗禁止令には以下の5パターンあるとされています。これらは程度の差はあるとしても、私たち全員が持っています。さらに詳細については、後日ご紹介します。
「完全であれ」
「強くあれ」
「もっと努力せよ」
「喜ばせろ」
「急げ」
拮抗禁止令という名前は、当初、禁止令に対抗するものと考えられていたからです。実際は禁止令とは無関係であったり、反対に禁止令を強化することもありますが、名前だけが変わらず残ってしまいました。
これらが頭の中で再生されるとき、人はそれに応じた決まった行動をとります。それは人によって異なるのではなく、およそ誰でも似たような行動となるので、それを観察するとその人の脚本を垣間見ることができます。
この観察を可能にするのが交流分析なのです。