心の状態と行動
前回お話した心の状態をもう少し詳しく見ていきましょう。
心を「自我状態」と呼ばれるパーソナリティ(性格、人格、傾向)をもとに構造化すると、「親」、「成人」、「子ども」の3つに分けられます。
「親」の自我状態は、自分の親や指導や養育を受けた人の考え方や行動、感情を引き継いだものですが、その作用のしかたには2種類あります。
一つは「支配的親」。規則を守ること、やるべきことを指示・命令し、道徳や価値観に反することを批判するといった言動をします。相手を守ったり、幸せを願う意図がある場合もありますが、相手を支配しようとしたり、がんこに自分の主張を押し通す場合もあります。
もう一つは「養育的親」。人の面倒をよく見たり、かばったり、なぐさめたりする行動を取ります。思いやりを持って接しますが、行き過ぎると過保護や過干渉に陥ったり、否定的な依存関係を作る原因になることもあります。
「子ども」の自我状態は、自分が子どものころに経験した感情や思考、行動をそのまま保存したものです。これも作用の違いから2種類に分けられます。
一つは「自由な子ども」です。親の制限や制約とは無関係に、楽しいときに笑い、悲しいときに泣き、未知のものに興味を示すような、ピュアな小さな子どものような心の状態です。好奇心が強く、行動的で創造力がありますが、反面、気が短かったり、自己中心的で軽率な行動を取る場合もあります。
もう一つは「順応した子ども」。親からの指示・命令に従順に従い、親の要求や期待に応えようとがんばります。しかし時には親に隠れていたずらをしたり、逆らったりすることもあります。行動の特徴は、協調的であり、素直で人当たりがいいのですが、依存心が強かったり、自分を押さえすぎてストレスを溜めるというネガティブな面もあります。
最後に「成人」の自我状態ですが、これは1種類しかありません。冷静沈着で、持てる知識を十分に使ってものごとを判断し、状況にあった適切な行動をしようとします。この状態が強く出過ぎると、冷たい印象を人に与えたり、打算的になったりする場合もあります。
あなたの、この24時間の行動を思い出してみてください。それぞれのシーンで、そのときあなたはどの自我状態にあったでしょう?考えてみると実に興味深いです。