意識をフェイントにかける
「何度も『勉強しなさい』と言っているのに、ぜんぜんしなくて…」
親の指示を拒む子どもについては、親のほうにより多くの原因があり、それは子どもの幼少期、さらには親自身の幼少期にまでさかのぼります。そうだとして、改善するにはかなりの努力が必要で、適正な専門家を頼る必要があります。しかし、少しでも自分たちでできることはしていきたいものです。あきらめるには早いです。
直接的な指示や命令は親子でなくても、受け取った側には抵抗や反発が起こることがあります。具体的な言葉に聞き手は反応しやすく、さまざまな判断や批判をするからです。直接的な表現を避けて、あいまいで抽象的な言葉を使うと、意外と聞き手は受け取りやすくなるのです。
冒頭のように、「勉強しなさい」というのは直接的な指示です。少し言葉を変えて、間接的な表現に変えてみます。
「勉強するといいと思うよ」
柔らかい印象を受けるので、強い抵抗は起こりにくくなります。
否定文を利用するやり方もあります。聞き手が否定文を理解するには、一旦、肯定文で理解し、そのあとにそれを取り消すというシーケンスをたどります。「失敗することは考えないで」と言われると、最初に失敗したときの状況を想像します。
「勉強しなくても困らないよね」
こう言われると、勉強せずに困っている状況が頭に浮かび、それはマズいなと思うでしょう。
間接的な質問も効果があります。「何時から始めるか決めてる?」という質問は、はい/いいえで答えられますが、受け手は何時から始めるかを考えます。頭の中に勉強を開始するイメージが浮かびます。それがきっかけになるでしょう。
「お母さんもがんばるわ!」と言葉に力をこめ、こぶしを握り締めると、自分が励まされたとポジティブな感覚を得ます。自分もがんばるぞという気持ちが強まります。
いずれも、相手に対して注意を集中させないように、あえて間接的であいまいな表現になっています。勉強という、子どもにとってセンシティブな言葉を和らげ、意識しないうちに親の言葉を受け入れてしまいます。まるで、意識をフェイントにかけてるようです。