話を聞いてくれない。
普段仲の良い親子であっても、ときにこのように感じることがあります。
進路のことでお母さんに相談したときのことです。最近のテストの結果が思ったより悪かったので、少し自信を失いかけていました。受験までまだ3カ月以上もあるけれども、このまま成績が伸びなければ志望校はあきらめなければなりません。
「ねえ、お母さん。私、無理かも。」
テストの話題になったとき、少しうつむきながら切り出してみたそうです。
「あきらめるのはまだ早いわよ。今、ボーダーラインでしょ?あともう少しがんばれば合格圏内じゃない。」
お母さんは忙しそうにご飯したくをしながら、少し大きめの声で励ましてくれました。
「今もがんばっているんだけどなぁ。」
100%ではないかもしれないけど、自分なりに一生懸命に勉強しているつもりなのです。
「今度の休みに新しい問題集を買いに行きましょう。やればできるって!」
振りむいて、ガッツポーズしながら笑顔で言ってくれたそうです。
お母さんは自分の娘のことを信頼しています。これまでもいくつか壁があったけれども乗り越えてきました。人生最初の大きな試練である高校入試であっても、必ず目標を達成できるはず。ポテンシャルはあるので、あとはメンタルの問題。そう信じています。
娘のほうは、最初はうまくいけそうな気がしていましたが、学力テストをするたびに心配が募ってきました。「全然、楽勝なんかじゃない。でも他の高校は嫌だし。」どうしたらよいのか、分からなくなっています。
せっかくのお母さんの勇気づけも娘の心には届かなかったみたいです。どうしてそんなことになるのでしょう?
娘は受験の不安から、藁にもすがるようにお母さんにアドバイスを求めました。しかしたとえお母さんにであっても、その不安を全部打ち明けることに抵抗がありました。少し怖い気がしたのです。だから、完全に心を開いて話をしていたわけではありません。
お母さんとしたら、娘がちょっと弱気になったくらいと考えていたかもしれません。いつも通り、発破をかけたつもりです。
このようなちょっとした会話においてもかみ合わなくなることがあります。コミュニケーションで相手に何かを伝えるためには、相手が自分に対して心を開いて、信頼感や安心感を持ってもらうことが必要です。心を閉ざしている状態では、何を言っても相手は受け止めてくれません。
心を開くということは意識的にできることではありません。無意識の中で信頼感や安心感が生まれることが多いのです。
では、どのようにしたら相手は心を開いてくれるのでしょうか?
それはまた次回に。