言うことを聞かない
「私の言うことなんて聞かなくて」
子どもにやる気がなく、ろくに勉強しないとおっしゃるお母さんが、次に言うセリフです。この言葉にはいくつかの省略があります。何を言うのか、どのように言うのか、誰が聞いていないのか、いつもか、などがはっきりしていません。日本語は省略が可能な言語ではありますが、省略された物事が話し手と聞き手で共有されているとは限りません。そんなことが原因でトラブルになった経験は誰にでもあるはずです。
今回は「いつも」に注目してみましょう。お母さんが何を言っても、子どもは必ず聞かないのでしょうか?これまでに、一度もお母さんの言うことを聞いたことがなかったでしょうか?振り返ってみると、そんなことはないはずです。お母さんのアドバイスを素直に受け止めて、それに従ったこともあるのではないでしょうか。
では、どんなときに言うことを聞かないのでしょうか?何を言ったときでしょうか?
相手に何かを伝え、それを受け取ってもらうというのはコミュニケーションです。せっかくの良いアドバイスも、コミュニケーションが築けなければ、相手には届かず、まったくの無駄となってしまいます。
コミュニケーションを用いて相手に何かを働きかけるためには、最初に、相手との間に信頼関係を築くことが必要です。信頼関係とは、お互いに相手を信じること、それによる安心感を持つこと、つまり、お互いに心を開いている状態のことをいいます。
心を開くのは意識ではありません。「よし、心を開くぞ」と言ってできることではないですよね。無意識のもとで相手を信頼するということなのです。
いくら熱心に勉強の大切さを説いたり、勉強しなければどういうことになるを論理的に話したりしても、信頼関係がなくては、思いのすべてを伝えることはできません。「親子だから信頼し合っている」という”幻想”は捨てて、子どもの目線、立場に立って接してみてはどうでしょう。