やる気の元はすでに備わっている
どんなに勉強が嫌いな子でも、成績を良くしたいという欲求はあります。悪いよりは良いに越したことはないというレベルでも、良くなりたいという欲求には違いありません。
成績を上げるためには勉強しなければいけません。勉強をして、勉強ができるようになるためには、成績を上げるという目的意識、知識を得るという価値観、がんばって努力すれば報われるという信念、勉強に適した環境、十分な時間、サポートしてくれる家族や先生といったものが必要になります。また、がんばった末に目標を達成したという過去の成功体験や、自分ならできるという自己有能感(潜在的に持っている感情)なども支えになるでしょう。
このような要素のいくつかは、子どもの中にすでに備わっているはずです。事の大小こそあれ、成功体験の一つや二つは誰にでもあります。その体験から、努力すれば達成できるという認識も得たはずです。知識欲や自己有能感、できる子になりたいという自己実現欲求などは、誰でも持っているものです。ただ、自分の中にある、それらの存在に気づいていないだけなのです。
人間の能力の発達のしくみや制限などについては、まだすべて解明できていません。たとえば、遺伝的な性質が能力の発達にどのように影響するかは、未知の領域がたくさんあります。もしかすると能力の発達の限界はあるのかもしれませんが、人類の進化、発展を見る限りは、それは遥か彼方と思えます。あるいは、生物としての人間の進化として、限界がどんどん遠くへ離れていくのかもしれません。
つまり、能力の限界はないので、そのときにできることをすべてを行うことで、おのずと能力は伸びていくと信じようではありませんか。
そのためには、先に述べた感情、経験、環境の存在に気づかせることが第一歩になります。子どもを見ていて、どうも停滞感が漂っているときには、子どもと静かに話してみましょう。
「どうして成績が上げようと思ってるの?」
「そういえば、あのときがんばってたよね?」
「なんか勉強の邪魔になってるものはある?」
「今度、ママに方程式教えて。忘れちゃった」
「勉強したら、どんな人間になるんだろうね?」