省略される言葉

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省略される言葉

「ぜんぜんできない」

受験を2か月半後に控えた生徒がこのように漏らします。

「何ができないの?」
「ぜんぶ」

 

人は言葉を使ってコミュニケーションをします。自分の頭の中にあることを、言葉に変えて相手に伝えようとします。しかし、言葉は不完全です。言い方を変えると、私たちは言葉を使い尽くせていません。したがって、伝えようと思っていることを、正確にすべて伝えきることはとても難しいのです。

冒頭の発言をした生徒は、頭にあることを言葉にする段階で、”何が”が抜け落ちてしまっています。情報が抜け落ちてしまうと、聞き手は自分で情報を補完しないといけません。そのとき聞き手は、自分の中にある記憶・知識・経験を元に、欠落している情報を勝手に埋めようとします。これがミスコミュニケーションの原因の一つになるのです。
日本語自体にも省略の慣習がありますね。主語や助詞がなかったり、「きれいな」などのように言葉が形容する幅が広かったり。私たちは前後の会話などから、聞き手が勝手に判断して理解していますが、ときにはズレが生じることがあります。

もうひとつ大事なことは、情報を省略してしまうとき、発言している本人も具体的な内容の整理がついていない場合があるということです。つまり、自分自身でもよく分からないまま話しているのです。冒頭の生徒は、できない問題が次から次へと出てきて、何もかも分からないと感じているようです。どのように言ったらいいのか分からず、非常にあいまいな表現になっています。

 

伝える側がきちんと自分の考えを整理して、言葉を選び、それらを論理的に組み立てから発言してくれるといいのですが、困ったことを抱えているときほど慌てていて、うまく言葉を使えずにいることが多いのではないでしょうか。
そんなときは、聞き手が建設的にサポートしましょう。失われた情報を質問によって取り戻すのです。

「ぜんぜんできない」
「何ができないの?」
「ぜんぶ」
「たとえば、どんなこと?」
「この数学の問題」
「他には?」
「昨日の英語の問題も」
「他は?」
「う~ん、とりあえずそれだけかな」
「数学と英語の問題が分からなかったんだね」
「そうです」

実際には理科や国語の問題も分からないところがあると思いますが、一番気になっていた問題を伝えることができて、ちょっと落ち着いたようです。

 

このように、単純に何かを省略してしまう以外にも、会話にはいろいろな情報の欠落が起こります。そういうときは質問が効果的です。

「今日のテスト、悪かったです」
「どのテストと比べて?」/「誰と比べて?」

「わたし、みんなに嫌われている」
「どのように嫌われてるの?」

「コミュニケーションが苦手なんです」
「どんなことを、どんな人と?]/「どんなふうに伝えたいの?」

質問をするということは、単に省略された情報を聞き出すだけではなく、話し手の頭の中の整理を促したり、それはもしかすると思い込みかもしれないという気づきを得る手助けにもなるのです。
お互いにこのようなサポートができると、より良いコミュニケーションが築けて、すばらしい人間関係を作ることができるのではないでしょうか。

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