安心感を生む会話テクニック
子どもが言うことを聞かないと嘆くお母さん。お母さんは子どもが言っていることを聞いてあげているでしょうか?
自分は聞いているつもりでも、子どもが聞いてくれていないと感じたらそれまでです。なにか作業をしながら背中で聞き、「はい、はい」、「分かった、分かった」などの”生返事”をしたりしていませんか。もしかすると、子どもは大事な話をしようとしていたかもしれません。「ママはわたしの話をちゃんと聞いてくれない」と心を閉ざしてしまうでしょう。
みんな誰でも、自分のことを分かってもらいたいと思っています。分かってもらうために、自分の話を聞いてもらいたいのです。
「だったら、はっきり言えばいいのに」と言う方がいるかもしれません。
言う、話すにもいろんなケースがあります。政治家が記者会見で不特定多数の聴衆に向かって話すとき、自分の主張を伝えることが目的です。一方、子どもがお母さんに相談したいときなどは、自分の考えもよくまとまっておらず、お母さんの反応を得ながら、問題を明確化したり、解決の糸口をつかもうとしたりしているかもしれないのです。つまり、”はっきり”言えないときもあるということです。
前回、コミュニケーションには信頼関係が前提という話をしました。信頼関係を得るには、お互いに心を開くことが必要です。心を開くのは簡単ではありません。しかし、会話の中のちょっとした言葉づかいや表情、動作などで相手に安心感を与えることはできます。
その一つに「バックトラック」という技法があります。コーチングなどでよく利用されていて、やり方は簡単です。相手の言葉をオウム返しすればいいのです。
「ママ、ちょっと困ってるんだ」
「困ってるのね。なに?」
これだけです。単に「なに?」と返すより、相手の言葉を使って返すほうが、「ちゃんと聞いてくれている」と相手は感じるのです。
「数学、よく分からないの」
「数学が分からないのね。どんなふうに?」
「問題ができなくて…」
「数学の問題の解き方が分からないのね。はじめっから?」
「ううん、途中から」
相手の言葉をそのまま繰り返してもよいですが、しつこくやりすぎると、逆に違和感を感じてしまいます。ちょっと言葉を変形してみるのもよいでしょう。
また、上の例で「問題ができなくて」と子どもが言ったときに、「ママも数学は苦手なの。先生に聞きなさい」などと返すと、突き放されたように感じます。問題の解き方をお母さんに教えてもらいたいと思っているわけではないので、数学が苦手であっても話を閉じずに、子どもが学習のどんな段階で悩んでいるのかを、子ども自身にも振り返らせるように話の方向を持っていくことができれば、意外な気づきが得られるかもしれません。