「どうせオレは勉強できないよ。運命なんだ。」
終業式の日に先生から渡された、少し厚い白い紙の通知表を開いて、1つずつ成績を見ていきます。上がった教科もあれば、下がった教科もあるでしょう。いつもパッとしない成績の子は、もしからしたらこんなふうに思うかもしれません。
「いつも同じだ。どうせオレは勉強できない」
自分の運命のように感じてあきらめてしまいがちです。しかし、それは運命などではなく、自分自身で作り上げた人生のシナリオの一部だとしたどうでしょう?
性格は”心の状態”の現れ方の傾向と考えることもできるというお話をしました。3つの”心の状態”が、どのような状況で、どういうふうに現れるかで、その人の思考や行動が決まります。その”心の状態”を認識して、うまくコントロールできれば、嫌な性格を直すこともできるはずです。
それでは、どのようにして”心の状態”の出方を身につけたのでしょうか?
人は生まれてから親(または親に代わる人)の保護を受けて成長します。親は子どもが赤ちゃんのときから、たくさんの言語・非言語のメッセージを与え続けます。赤ちゃんにとっては、それらのメッセージに従わなければ、死に直結すると本能で感じ取ります。たくさんのメッセージを受け取り続けているうちに、子どもはどのように生きていこうかを無意識のうちに決めます。それは人生のシナリオのようなもので、およそ6~7歳までに決まると言われています。無意識の、しかも未熟なうちの決断ですが、不思議なことに、大人になってもなお持ち続けているのです。
そんなはずはないと思うかもしれませんが、「子どもは子どもらしくしなければならない」や「子どもは黙って親の言うことを聞くもの」などと考える人は、親からのメッセージを自分の”人生の方針”として持っている可能性が高いのです。
親は「○○してもいいよ」という肯定的なメッセージをたくさん子どもに与えますが、「○○するな」という否定的なメッセージも与えます。これらの否定的なメッセージと「○○すべき」という教訓的なメッセージは、子どもが決断する”人生の方針”に大きく影響を及ぼすことになるのです。
ではどうして、幼児期に作った”人生の方針”を大人になってからも持ち続けるのでしょうか?
「分かっているけど、なかなかやめられない」とか、「自分のやり方(生き方)を変えると、なんか不安」と思ったことはないでしょうか?人間は長くやり続けてきたことや自分自身を変えることに不安や抵抗を感じます。そして、「これが私の人生」、「これは運命なの」などとあきらめてしまう。これが”人生の方針”を変えられない理由なのです。
”人生の方針”を変えることは簡単ではありません。しかし、自分自身に繰り返し起こる”うまくいかないこと”は運や運命ではなく、自分で作り上げた”人生の方針”だと分かることが、変化への第一歩であることは間違いありません。