お母さんの思い込みと子どもの自立
「うちの子が何度も同じ質問するのは不安だからなんです。ですから先生、優しくしてあげてください。」
お母さんはお子さんが生まれてからずっと見てきたので、自分の子どものことなら何でも分かっているつもりです。表情やしぐさで、何を考えているのか分かるというのです。確かにその通りだと思います。長年一緒にいるので、子どもの状態を経験的に知っています。
しかし、その判断が行き過ぎることもあります。
お子さんは家庭以外でもたくさんの経験を積んでいます。いろんな人と接しています。お母さんの知らない経験をして、それまで見たこともない反応をしているかもしれません。
経験によって人は日に日に成長します。今日はすでに昨日までのお子さんではないのです。
そういうお子さんに対して、「こういうときはこうなんだ」というような思い込み、決めつけはしていないでしょうか?
思い込みがあるとき、例外的な出来事が起きると無意識にそれを無視しがちです。しかし、そこには大きな変化があるかもしれないのです。その変化はお子さまの成長機会でもあります。
思い込み・決めつけによって、まるで算数の公式のように、お子さんを一定の枠に入れようとしていませんか?
お子さんを枠に入れておくことで、無意識に自分は子どものことを分かっているという安心感を得ようとしているのかもしれません。枠に入れられたお子さんは多少の窮屈さは感じても、やはり守られている安心感を感じることでしょう。
しかしその反面、枠に入れられた子どもは自分で考え、行動する意欲がなくなっていきます。すなわち、自立できなくなるのです。子どものうちは「かわいい子」でいられるかもしれません。やがて大人になって社会に出たときに、お子さんにどのようなことが起こるのか想像してみてください。
大切なお子さんに対する何気ないその思い。思い込みになっていませんか?決めつけていませんか?一呼吸をしてから、今一度見つめ直してください。